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聖闘士星矢の女キャラ一覧。シャイナからユナへの役割の変化

『聖闘士星矢』の女キャラ一覧

イメージ画像:ヨムコミ!メディア作成

『聖闘士星矢』シリーズを彩る女性キャラクターたち。原作では仮面の掟という厳格なルールのもと、魔鈴やシャイナといった女性聖闘士たちが活躍しましたが、その強さや役割はどこか限定的だったかもしれません。一方で、敵キャラでありながら強烈な存在感を放ったパンドラやヒルダ、そして物語の核となる女神アテナ(城戸沙織)など、多様な女性が登場します。

時代が流れ、スピンオフ作品の『聖闘士星矢Ω』では、主人公の一人としてユナが仮面をつけずに戦い、『聖闘士星矢セインティア翔』では女性だけの聖闘少女が主役となります。原作には女性の黄金聖闘士はいたのか、ファンの間で人気の高い女性は誰なのか。この記事では、そうした疑問に応えるため、『聖闘士星矢』シリーズに登場する女性キャラの一覧と共に、その設定や役割が原作からスピンオフ作品でどのように変化し、進化してきたのかを詳しく解説します。

この記事を読むと分かること

  • 原作における女性聖闘士の「仮面の掟」とその意味
  • 魔鈴やシャイナなど原作主要女性キャラクターの役割
  • 『聖闘士星矢Ω』のユナが示した女性聖闘士の新たな姿
  • 『セインティア翔』などスピンオフ作品での女性の描かれ方

原作のシャイナの時代から、『Ω』のユナの時代までに、女性キャラクターの役割がどう変わったのか、その変遷を見ていきましょう。


聖闘士星矢の女キャラ:原作の仮面と元型

聖闘士星矢の女キャラ:原作の仮面と元型

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原作の『聖闘士星矢』における女性キャラクターは、物語の根幹を成す重要な存在でありながらも、独特の制約と役割を持っていました。特に女性聖闘士を象徴する「仮面の掟」や、物語の中心であるアテナの立ち位置、さらには敵幹部としての存在感など、その描かれ方を掘り下げます。

なぜ仮面を?女性聖闘士の「掟」

なぜ仮面を?女性聖闘士の『掟』

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原作の『聖闘士星矢』において、女性聖闘士を最も特徴づけるルールが「仮面の掟」です。これは、女性が聖闘士として戦う際、その女性性を隠すために仮面を着用しなければならないという厳格な決まりでした。この掟は、単なる衣装の設定を超え、彼女たちの生き方や物語そのものに深く関わる、強力な物語装置として機能していました。

この掟が存在する背景には、聖域(サンクチュアリ)という組織の特質が関係しています。聖域は、女神アテナを守るという神聖な目的を持ちつつも、その実態は教皇を頂点とした厳格な階級制度(黄金・白銀・青銅)に基づく男性中心の軍事組織でした。そのような環境下で、女性が戦士として存在するためには、ある種の「性を超越した存在」である必要があった、あるいは「一人の女性として見られること」を捨てる覚悟の証として、仮面が用いられたと考えられます。

仮面は、彼女たちのアイデンティティを抑制する象徴であり、同時に彼女たちを聖闘士という「戦士」の枠組みに組み込むための強制的な手段でもあったのです。

掟を破った場合の結末:葛藤を生む装置

この掟が単なる設定で終わらないのは、その違反に極めて重いペナルティが課せられていたためです。掟によれば、女性聖闘士は仮面の下の素顔を男性に見られた場合、その時点で二つの選択肢しか許されませんでした。

  • その男性を殺す
  • その男性を愛する

この「殺すか、愛するか」という二者択一は、極めて強烈なドラマを生み出します。特に、蛇遣い座(オピュクス)のシャイナと主人公・星矢の関係性は、この掟によって完全に規定されています。シャイナは星矢に素顔を見られたことで、当初は掟に従い彼を殺そうと執拗に追いかけます。しかし、その殺意にも似た執着は、やがて掟が許すもう一つの選択肢「愛する」ことへと反転していくのです。

このように、「仮面の掟」は、女性聖闘士のアイデンティティ、葛藤、そして秘密を本質的に結びつける役割を果たしました。それは、シャイナの「ライバルから恋愛へ」というサブプロット全体を生成する直接的な原因であり、彼女の行動原理の根幹となりました。

興味深いことに、この掟は後の時代に制作されたスピンオフ作品やリブート作品では、異なる扱われ方をします。例えば、Netflixのリメイク版『Knights of the Zodiac: 聖闘士星矢』では、この掟は最初から存在しないものとして描かれ、女性聖闘士も素顔で活動しています。また、『聖闘士星矢Ω』のユナは、この掟の存在自体に明確に反対します。

これらの後発作品での変化は、逆説的に、原作連載時(1980年代)の「仮面の掟」がいかに当時のジェンダー観を反映した特異な設定であったか、そして『聖闘士星矢』という物語において、女性キャラクターのドラマを描く上でいかに中核的な柱であったかを浮き彫りにしています。掟の削除が、シャイナの星矢への動機付けを完全に書き換える必要を生じさせたことからも、その重要性がわかります。

師匠とライバル:魔鈴とシャイナの役割

師匠とライバル:魔鈴とシャイナの役割

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原作の聖域において、女性聖闘士の数は決して多くありません。その中で、読者に最も強い印象を与え、主人公たちの物語に深く関わったのが、イーグル(鷲座)の魔鈴オピュクス(蛇遣い座)のシャイナです。彼女たちは共に、青銅聖闘士よりも格上である白銀聖闘士(シルバーセイント)という高い地位にあり、それぞれが「師匠」と「ライバル」という明確な元型(アーキタイプ)として配置されていました。

イーグル 魔鈴:「師匠」と「導き手」

魔鈴は、主人公・ペガサス星矢の師匠として登場します。彼女は聖域の掟に従い仮面を着けていますが、その素顔は星矢の行方不明の姉・星華と瓜二つであることから、物語全体を通して「魔鈴=星矢の姉」ではないかという巨大なミステリーの対象となります。

彼女の物語上の機能は、単なる戦闘技術の師範に留まりません。

  • 師匠としての役割:星矢に小宇宙(コスモ)の概念やペガサス流星拳の基礎を教え込み、聖闘士としての道を示します。その指導は極めて厳格ですが、根底には星矢への期待と信頼が流れています。
  • ミステリーの提供:前述の「姉疑惑」は、星矢が戦い続ける動機の一つとなります。魔鈴自身も行方不明の弟を探しているという背景があり、その設定がミステリーをさらに深めます。
  • 導き手としての役割:魔鈴は早くから聖域のトップである教皇(双子座のサガ)の異変に気づいており、聖域の体制に微妙な反逆の意志を見せます。十二宮編では、星矢たちを陰ながら導き、時には白銀聖闘士の追手から星矢を救う(アステリオン戦)など、反逆者としてのリスクを冒してまでも彼らをサポートしました。

白銀聖闘士としての実力も高く、その冷静な分析力と戦闘技術は、血気盛んな星矢にとって常に指標となるものでした。彼女は、星矢の肉体的な師であると同時に、聖域の闇に立ち向かう精神的な導き手でもあったのです。

momomo
魔鈴先生のクールな強さと、星矢への密かな想いのギャップがたまらないんだよね!

オピュクス シャイナ:「ライバル」と「掟の体現者」

魔鈴が「静」の導き手であるならば、シャイナは「動」のライバルとして鮮烈な印象を残します。彼女は蛇遣い座の白銀聖闘士であり、魔鈴とはライバル関係にあります。彼女が星矢に執着する理由は、二重のコンプレックスから始まります。

第一に、彼女の弟子であったカシオスが、ペガサス聖衣を巡る最終選考で星矢に敗れたこと。第二に、そして決定的なのが、前述の「仮面の掟」です。星矢との戦いの中で、不慮の事故により仮面を割られ、素顔を見られてしまいます。

この瞬間から、シャイナの行動原理は「掟」に支配されます。「見られたからには、殺すか、愛するか」。当初、彼女が選んだのは「殺す」ことでした。白銀聖闘士としてのプライドと、掟を破られた怒りから、彼女は星矢を執拗に追い続けます。必殺技である「サンダークロウ」は、幾度となく星矢を苦しめました。

しかし、この強烈な執着は、彼女自身も気づかぬうちに、掟が示すもう一つの道「愛する」へと変化していきます。十二宮編で、獅子座のアイオリアの攻撃から星矢を身を挺して庇ったシーンは、彼女の感情が憎悪から愛情へと完全に反転したことを象徴する場面です。

シャイナのキャラクター・アークは、「仮面の掟」という制約の中で葛藤し、敵対者から庇護者へと立場を変えていくドラマそのものです。彼女は、原作における「戦う女性」の悲劇と情熱を最も色濃く体現した存在と言えるでしょう。

聖闘士以外の主要な女キャラ(アテナ)

『聖闘士星矢』の物語において、聖闘士以上に中心的な役割を担う女性キャラクターが、城戸沙織(きど さおり)、すなわち女神アテナの化身です。彼女はこの物語の絶対的なヒロインであり、すべての聖闘士が、その存在理由の根幹として守護することを誓う対象です。

彼女の描かれ方は、物語の進行と共に大きく二つのフェーズに分かれます。

第1フェーズ:財閥の令嬢・城戸沙織

物語の序盤、城戸沙織は亡き祖父・城戸光政の遺志を継ぎ、グラード財団の若き総帥として君臨しています。この時の彼女は、自身がアテナであるという自覚がなく、星矢たち(光政の非嫡出子たち)を世界中から集め、銀河戦争(ギャラクシアンウォーズ)という私的な見世物を開催する、傲慢で高飛車な「お嬢様」として描かれます。

星矢たち青銅聖闘士にとって、彼女は守るべき対象ではなく、むしろ反発の対象でした。この初期設定は、後に彼女がアテナとして覚醒した際のギャップを際立たせる効果的な演出となっています。

第2フェーズ:女神アテナとしての覚醒

聖域からの刺客(白銀聖闘士)との戦いや、黄金聖衣の来訪を経て、沙織は自身が13年前に聖域で殺されかけ、城戸光政によって救い出されたアテナの化身であると覚醒します。この覚醒を機に、彼女の役割は一変します。

アテナの役割:庇護対象と精神的支柱

アテナとしての沙織は、地上の愛と平和を守る女神であり、聖闘士たちが戦うための大義そのものとなります。彼女の物語上の機能は、一見すると受動的に見えます。

  • 庇護対象(囚われの姫):彼女は物語の中心的な対象であり、敵勢力(教皇、ポセイドン、ハーデス)の最大の標的です。十二宮編では胸に黄金の矢を受け、ポセイドン編ではメインブレドウィナの柱に幽閉され、ハーデス編では冥界へと自ら赴きます。彼女が危機に陥ることこそが、星矢たち主人公が行動を起こす最大の原動力となります。
  • 精神的・道徳的支柱:一方で、彼女は単に受動的なヒロインではありません。その強大な小宇宙と無限の慈愛をもって、敵の攻撃から地上を防衛したり、傷ついた聖闘士を癒したりします。彼女の「愛と正義」という理念こそが、聖闘士たちの小宇宙を奇跡的なレベルまで高める(セブンセンシズやその先へ)精神的な源泉となります。

ファンからも「セイントの頂点にいるヒロイン」「存在自体が魅力的」といった評価が見られるように、彼女のコスモロジー(神話体系)の頂点としての存在感は、受動的な役割を超えて、物語の道徳的・精神的な中心として絶対的な重要性を持っていました。

敵勢力の指揮官:パンドラとヒルダ

敵勢力の指揮官:パンドラとヒルダ

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原作の『聖闘士星矢』を分析する上で非常に興味深い点は、アテナ側の女性聖闘士(魔鈴、シャイナ)が中堅幹部(白銀聖闘士)に留まっていたのに対し、敵対勢力においては、女性が組織の最高指揮官統率者として、より大きな軍事的・政治的権威を行使していたことです。

冥王軍指揮官 パンドラ

「冥王ハーデス編」で登場するパンドラは、この傾向を最も強く示すキャラクターです。彼女はハーデスの現世での姉(実際にはハーデスによって選ばれ、家族を失った悲劇の女性)としての役割を持ち、108の冥闘士(スペクター)を束ねる冥王軍の総指揮官として絶大な権力を振るいます。

彼女の権威は、冥界三巨頭(ラダマンティス、アイアコス、ミーノス)という最強の幹部たちさえも上回ります。三巨頭でさえ彼女の前では膝をつき、その命令に絶対服従する姿は、アテナ軍の組織構造(女性は中堅)とは明確な対比をなしています。

パンドラは冷徹な効率性で冥王軍を動かし、アテナ軍を終始圧倒します。しかし、その冷酷な仮面の下には、双子の神ヒュプノスとタナトスによって運命を操られ、ハーデスに仕えることしか許されなかった深い悲劇が隠されています。最終的には、一輝の言葉に心を動かされ、ハーデスを裏切る形で聖闘士たちに協力し、壮絶な最期を遂げます。彼女は、敵対者でありながらも、物語の終盤において極めて重要な役割を果たした、悲劇の指揮官でした。

パンドラ様の冷酷な美しさと、最後に見せた人間らしさのギャップに心打たれたわ…
yuuka

アスガルド編 ポラリスのヒルダ

アニメオリジナルの「アスガルド編」は、原作のポセイドン編の前に挿入されたエピソードですが、ここでも中心的な役割を担うのは女性指導者、ポラリスのヒルダです。

ヒルダは、北欧アスガルドの地を治めるオーディーンの地上代行者であり、その敬虔な祈りによって極寒の地の氷が溶けるのを防いでいる、民から慕われる慈愛に満ちた巫女でした。彼女の立場は、アテナと対になる北欧の神聖な指導者です。

しかし、物語は彼女が海皇ポセイドン(の部下)によって、邪悪な力を持つ「ニーベルンゲン・リング」をはめられたことで急変します。リングに心を支配されたヒルダは豹変し、アテナへの宣戦布告と地上支配を宣言。アスガルド最強の7人の戦士「神闘士(ゴッドウォーリア)」を招集し、星矢たちと敵対します。

ヒルダの物語上の機能は、「憑依された巫女」という元型です。彼女はアスガルド編全体の原動力であり、「救われるべき犠牲者」であると同時に「敵の総大将」でもあるという二重の役割を担っていました。アテナ軍では男性(教皇)が占めていた指揮系統の頂点に、アスガルド編では女性(ヒルダ)が立っていたことは、逆説的に女性キャラクターが物語を牽引するポテンシャルを示していたと言えます。

原作の主な女性キャラクター一覧

これまでに挙げたキャラクターを含め、原作漫画および初期のアニメシリーズ(アスガルド編含む)に登場した、主要な女性キャラクターの役割や設定を一覧表でまとめます。この一覧からも、原作時点での女性の役割が「戦闘員(制約付き)」「庇護対象(神聖)」「敵幹部(権力者)」という元型に分類される傾向が見て取れます。

名前 所属 / 階級 主な役割・設定
城戸 沙織 アテナ / 神 物語のヒロイン。聖闘士たちが守るべき地上の女神。本作の物語の核となる存在。
魔鈴 聖域 / 白銀聖闘士(鷲座) 星矢の師匠。仮面の掟に従う。行方不明の弟を探しており、星矢の姉候補というミステリーを担う。
シャイナ 聖域 / 白銀聖闘士(蛇遣い座) 星矢のライバル。仮面の掟により星矢に愛憎を抱き、敵対者から庇護者へと変化する。
ジュネ 聖域 / 青銅聖闘士(カメレオン座) アンドロメダ瞬の修行仲間。瞬を戦いから引き留めようとするも、敗北する悲劇的な役回り。
ヒルダ アスガルド(アニメ) / オーディーン地上代行者 アスガルド編の中心人物。ニーベルンゲン・リングに支配され敵対するが、本来は慈愛深い指導者。
パンドラ 冥王軍 / 冥王軍指揮官 ハーデスの姉(代行)。冥闘士108魔星を率いる絶対的な指揮官。悲劇的な運命を背負う。
テティス 海皇軍 / 海闘士(マーメイド) ポセイドンの側近。海闘士(マリーナ)の使者として聖闘士の前に現れ、海皇への忠誠を示す。

その他の主要な女性たち

上記以外にも、物語に影響を与えた女性キャラクターが存在します。

  • ジュネ(カメレオン座):青銅聖闘士。アンドロメダ島で瞬と共に修行した仲間であり、瞬に密かな想いを寄せていました。彼女の重要性は、戦闘力よりも、その「献身」と「警告」にあります。十二宮編へ向かおうとする瞬に対し、戦いの過酷さと聖域の恐ろしさを知るがゆえに、愛する瞬を失いたくない一心で実力行使で引き留めようとします。彼女は、聖闘士の義務がもたらす悲劇的な代償を、特に戦いを好まない者(瞬や彼女自身)の視点から明確に示した存在でした。
  • テティス(マーメイド):ポセイドン配下の海闘士(マリーナ)であり、彼に仕える人魚。彼女は海皇ポセイドン(ジュリアン・ソロ)に忠誠を誓い、その使者として、また時には実行部隊として聖闘士たちの前に現れます。彼女はアテナ側の聖闘士と対になる存在として、敵対する側にも確固たる忠誠心と主体性があることを見せました。

このように、原作シリーズにおける女性は、聖闘士としては「仮面の掟」という制約下にありましたが、物語のヒロイン(アテナ)や敵幹部(パンドラ)としては、男性キャラクターを動かすほどの強大な影響力を持っていたことがわかります。

聖闘士星矢の女キャラ:『Ω』『翔』への進化

聖闘士星矢の女キャラ:『Ω』『翔』への進化

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原作から長い時を経て、新世代の物語として制作されたスピンオフ作品群。特に『聖闘士星矢Ω』や『聖闘士星矢セインティア翔』では、女性キャラクターの扱いや役割が劇的に「進化」しました。原作の「仮面の掟」がどのように解釈され、新たな時代の女性戦士像がどう構築されたのかを見ていきます。

『Ω』の主人公:仮面を脱いだユナ

『Ω』の主人公:仮面を脱いだユナ

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2012年から放送が開始された『聖闘士星矢Ω』は、東映アニメーションによるオリジナル続編として、原作や旧来のアニメ版から約25年後の世界を描きました。この作品は、シリーズにおける女性キャラクターの描き方に、明確なパラダイムシフトをもたらしました。

その最も象徴的な存在が、新世代の主人公の一人、鷲座(アクィラ)のユナです。彼女は、新しいペガサス聖闘士・光牙と共に戦うメインの青銅聖闘士(ブロンズセイント)の一人として設定されました。この「女性がメイン主人公の一角を占める」という点自体が、星矢たち5人の男性が中心だった原作からの大きな変化です。

彼女に与えられた星座が、原作で「師匠」の元型であった魔鈴と同じ「鷲座(アクィラ)」であることは偶然ではありません。これは、原作の女性聖闘士の系譜を確かに受け継いでいることを示しつつ、その役割を根本から変えるという制作陣の意図が感じられます。ユナの階級は、魔鈴の白銀(シルバー)ではなく、主人公たちと同じ青銅(ブロンズ)であり、彼女が「導く者」ではなく「共に成長する仲間」であることを明確にしています。

ユナが象徴する「進化」:仮面の掟の拒絶

『Ω』におけるユナの最大の功績は、原作の女性聖闘士を縛り付けた「仮面の掟」を、物語の初期段階で明確に否定したことです。

『Ω』の世界でも「仮面の掟」は過去のしきたりとして残存しており、ユナも当初は仮面を着けて修行していました。しかし、彼女は自らの意志で仮面を脱ぎ捨てます。彼女は「聖闘士である前に一人の女性である」という強い意志を持ち、女性聖闘士がアイデンティティを隠す必要のない、新しい時代を象徴する存在として描かれます。

これにより、彼女は原作のシャイナが背負わされた「素顔を見られたから殺すか愛するか」といった葛藤とは無縁になりました。彼女の悩みや葛藤は、男女の区別なく、仲間との絆、自らの出自(「常によりよい第三の選択肢を探せ」という教え)、そして敵との戦いの中で「自らがどう生きるべきか」という、より現代的で内面的なものに焦点が当てられています。

彼女は単なる「紅一点」のヒロイン(=守られる対象)ではなく、正真正銘のメイン主人公の一人として、物語の推進力を担いました。ファンからの定性的な評価(2013年の人気投票コメント)では、彼女の「クールでストイック」「美しくかっこいい」「仲間思い」な側面が高く評価されており、強さと女性らしさ、そして仲間への忠誠心を両立させた新しい女性戦士像が、視聴者に受け入れられたことがわかります。

ユナの存在は、原作のシャイナや魔鈴が背負っていた「掟」という名のジェンダー的な制約から女性聖闘士を解放し、『聖闘士星矢』の世界における女性戦士の在り方を根本から再構築した、画期的なキャラクターであったと言えます。

『Ω』が描く新たな女性像:ソニアとアリア

『聖闘士星矢Ω』が示した女性キャラクターの進化は、主人公のユナだけに留まりません。第1部(マルス編)の物語において、原作の元型を継承しつつ、それを現代的に深く掘り下げた二人の重要な女性、ソニアアリアの存在が不可欠です。

彼女たちは、原作における「悲劇の敵対者(パンドラなど)」と「庇護される女神(アテナ)」の役割を、より人間的かつ複雑な形で再構築しました。

悲劇の敵対者 ソニア

ソニアは、第1部の敵であるマルスの娘として登場します。彼女は父マルスへの愛と忠誠を誓い、ホーネットのマーシアンとして、また後には蠍座(スコーピオン)の黄金聖闘士として、光牙たちの前に立ちはだかります。

彼女のキャラクター造形は、原作のパンドラが持つ「悲劇性」や、シャイナが持つ「仮面」のモチーフを受け継いでいます。ソニアもまた、自らの素顔や本心を隠すために仮面(マスク)を着用しています。しかし、彼女の仮面は原作の「掟」によるものではなく、自らの出自(マルスの娘、メディアの義理の娘)や家族愛への葛藤、そして弟であるエデンへの複雑な感情といった、内面的な「弱さ」を隠すための比喩的な防衛機制として機能しています。

彼女は父の理想を信じようとしながらも、その過激な行いや母(メディア)の暗躍に気づき、深く苦悩します。ファンからの「幸せになってほしかった」「仮面で本音を隠し虚勢を張るけれども、本当は彼女も小さな一人の少女だった」といった共感的なコメント(2013年人気投票)が、彼女の魅力を物語っています。

ソニアは、原作の敵幹部が持つ「悲劇」を、より個人的で共感可能な「家族のドラマ」に落とし込み、その人間的な葛藤こそが焦点とされた、現代的なアンチヒロイン像を示しました。

人間化された女神 アリア

アリアは、『Ω』第1部における「アテナの代理」とも言える最重要キャラクターです。彼女はマルスによって幽閉されていた少女であり、城戸沙織(アテナ)から光の小宇宙を受け継いだ存在でした。

物語序盤、彼女はマルスから世界(と沙織)を救うための鍵であり、光牙たち主人公が守るべき「囚われの姫」として登場します。この設定は、原作で沙織が担っていた「庇護対象」の役割と酷似しています。

しかし、アリアの描かれ方は、原作の沙織とは大きく異なります。沙織が最初から「女神」としての威厳と絶対的な存在感(時に傲慢さ)を持っていたのに対し、アリアは幽閉されていたがゆえに外の世界を知らず、臆病で傷つきやすい、ごく普通の少女として描かれます。

彼女は光牙たちとの旅を通じて、世界の美しさや人々の温かさを知り、「自らの意志でこの世界を守りたい」と願うようになります。ファンのコメント(2013年人気投票)にある「真のアテナではなかったかもしれませんが、世界を思う心の美しさは沙織さんと変わらなかった」「自らの意思で世界を守ろうとしたアリアの強さが忘れられません」という言葉は、視聴者が彼女を受動的な対象としてではなく、能動的な意志の力として認識していたことを示しています。

アリアは、「女神」という絶対的な元型を、視聴者が共感できる「人間味のある少女」へと見事に翻訳し、その上で自己犠牲に至る精神的な強さを描いた点で、原作のヒロイン像をアップデートした存在と言えるでしょう。

rico
アリアの成長する姿に、何度も涙してしまいました…

『聖闘士星矢セインティア翔』とは?

『聖闘士星矢セインティア翔』とは?

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『聖闘士星矢』ユニバースにおける女性の役割の進化を語る上で、『聖闘士星矢セインティア翔』(秋田書店「チャンピオンRED」にて2013年連載開始、作画:久織ちまき氏)の存在は、『Ω』のユナ以上に直接的かつ画期的なものです。

『Ω』が原作の未来を描き、主人公チームの一員として女性(ユナ)を対等に配置したのに対し、『セインティア翔』は、女性キャラクターのみで構成される戦士団を「主人公」に据えるという、フランチャイズ史上初めての試みを行いました。

この作品は、車田正美氏によって「公認」されたスピンオフ作品であり、原作正典(カノン)の時系列、具体的には原作の「銀河戦争編」と「十二宮編」の間の時期(城戸沙織がアテナとして覚醒し、聖域との対立が深まる最も緊迫した時期)を舞台にしています。

「聖闘少女(セインティア)」という新階級

『セインティア翔』が巧みだったのは、原作の厳格な階級制度(黄金・白銀・青銅)や「仮面の掟」といった設定を無理に改変するのではなく、「聖闘少女(セインティア)」という全く新しいクラスの女性戦士を創設した点です。

聖闘少女とは、以下の特徴を持つとされています。

  • アテナ(城戸沙織)の身辺警護や侍女として仕えることを本来の任務とする、アテナ直属の存在。
  • 女性にしか就くことが許されない特別な聖闘士。
  • 彼女たちの聖衣(セインティアクロス)は、星座をモチーフにしている点は聖闘士と同じだが、より女性的なラインや装飾が施されている。
  • アテナの侍女という立場上、「仮面の掟」の対象外であり、素顔で活動する。

この設定により、原作の男性中心の階級制度(ピラミッド)を回避しつつ、アテナの最も傍に仕えるという特権的な立場で、女性たちが活躍できる舞台を創り出しました。

物語は、主人公である子馬座(エクレウス)の翔子が、邪神エリスの依り代となった姉・響子を巡る運命に巻き込まれ、聖闘少女として覚醒していくところから始まります。彼女は、イルカ座(ドルフィン)の美衣や小熊座(ウルサミノル)のシャオリンといった仲間たちと共に、アテナ・城戸沙織を守るため、エリスが率いる邪闘士(ドリアード)たちと戦います。

この作品の登場は、『聖闘士星矢』というフランチャイズが、歴史的に男性キャスト中心であった構造から、「女性主導の物語(ウーマン・セントリック・ストーリー)」へと本格的に舵を切ったことを示す、決定的な出来事でした。それは、女性キャラクターへの需要と、その物語的可能性が公式に認識されたことを示す、重要なデータポイントです。

原作に女性の黄金聖闘士はいたか?

原作に女性の黄金聖闘士はいたか?

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ファンの間で長年にわたり、聖闘士の強さの象徴である「黄金聖闘士(ゴールドセイント)」について、「女性の黄金聖闘士は存在するのか?」という疑問が議論されてきました。

まず、明確な結論から述べると、車田正美氏による原作漫画『聖闘士星矢』(1985年~1990年)において、女性の黄金聖闘士は一人も登場しません。聖域の頂点に立ち、黄道十二宮を守護する最強の12人の聖闘士は、すべて男性として描かれました。

原作の階級制度では、女性聖闘士の最高位は、魔鈴(鷲座)とシャイナ(蛇遣い座)が属していた「白銀聖闘士(シルバーセイント)」でした。彼女たちでさえ、作中での戦闘描写は、星矢たち青銅聖闘士や、敵の幹部クラス(冥界三巨頭など)と比較すると、限定的であったと言わざるを得ません。当時の設定において、聖域の最高戦力である黄金聖闘士の地位に女性が就くことは、想定されていなかったようです。

スピンオフ作品群における「女性黄金聖闘士」の解釈

しかし、この「女性黄金聖闘士=不在」という原作の設定は、後のスピンオフ作品群によって、様々な形で解釈が拡大・変更されています。

  • 『聖闘士星矢Ω』での登場:前述の通り、『聖闘士星矢Ω』において、ソニアが一時的に蠍座(スコーピオン)の黄金聖衣を纏って登場します。彼女はマルスの娘という特殊な立場であり、正規の継承者ではありませんでしたが、女性が黄金聖衣を装着し、黄金聖闘士として戦った(結果として聖衣に拒絶され命を落とす悲劇を招きますが)初のケースとして注目されました。また、『Ω』では魚座(ピスケス)のアモールや乙女座(バルゴ)の不動など、性別を超越したような中性的な魅力を持つ男性黄金聖闘士も登場し、黄金聖闘士の多様性を広げました。
  • 『聖闘士星矢 NEXT DIMENSION 冥王神話』の展開:車田正美氏自身が描く正統な続編(前聖戦の物語)である『NEXT DIMENSION』では、ファンを驚かせる設定が投下されました。それは、シャイナが属する「蛇遣い座(オピュクス)」が、かつては黄道十二宮に続く「伝説の13番目の黄金聖宮」であったというものです。この設定により、蛇遣い座の聖闘士であるシャイナが、この13番目の黄金聖闘士と何らかの関連を持つのではないか、という考察がファンの間で白熱しています。
  • その他のスピンオフ作品:『聖闘士星矢 冥王異伝 ダークウィング』や、ゲーム作品など、パラレルワールドや異なる時代設定の物語においては、女性が黄金聖闘士として活躍する描写も見られます。

このように、「女性の黄金聖闘士」というテーマは、原作正典においては「存在しなかった」が、スピンオフや続編によってその「可能性」が追求され続けている、フランチャイズの進化を象徴するトピックの一つとなっています。

聖闘士星矢の女キャラの役割の変遷

『聖闘士星矢』シリーズが30年以上にわたって紡いできた物語の中で、女性キャラクターの役割は、時代背景やメディアの変化を反映しながら、劇的な「進化」を遂げてきました。その変遷を振り返ります。

momomo
最後に、今回の記事内容のポイントをまとめます。
  • 原作(1980年代)では女性聖闘士は「仮面の掟」に縛られていた
  • 魔鈴は師匠、シャイナはライバルという元型的な役割を担った
  • 仮面の掟は、素顔を見られたら「殺す」か「愛する」というものだった
  • 城戸沙織(アテナ)は「守られるヒロイン」であり精神的な支柱だった
  • 敵勢力ではパンドラやヒルダが指揮官として高い地位についていた
  • 原作の聖域は男性中心の軍事組織として描かれていた
  • 原作において女性の黄金聖闘士は登場しなかった
  • 『聖闘士星矢Ω』(2012年)で女性の描き方は大きく進化した
  • 『Ω』のユナは仮面を拒否し、男性と対等な主人公として戦った
  • ユナは原作の魔鈴と同じ鷲座(アクィラ)だが階級は青銅だった
  • 『Ω』のソニアは悲劇的な背景を持つ敵役として深く描かれた
  • 『Ω』のアリアは「人間的な弱さを持つ女神代理」として描かれた
  • 『聖闘士星矢セインティア翔』は女性戦士が主役の物語である
  • 「聖闘少女(セインティア)」はアテナ直属の侍女的な戦士団である
  • シリーズ全体を通して、女性の役割は「制約」から「解放」へと進化した
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最後に

今回は、『聖闘士星矢』シリーズに登場する女性キャラクターについて、その役割の変遷を一覧で解説しました。

原作の「仮面の掟」という厳格な制約のもとで描かれたシャイナや魔鈴の時代から、『聖闘士星矢Ω』のユナ、『セインティア翔』の翔子たちのように、物語の主人公として活躍する現代への「進化」を、ご理解いただけたのではないでしょうか。

彼女たちの描かれ方の変化を知ることで、作品世界をより深く楽しむきっかけになれば幸いです。

『聖闘士星矢』の世界をさらに深く知りたい方は、ぜひ関連作品もチェックしてみてください。

-アニメ, 少年・青年漫画